女嫌いと男性恐怖症
第39話 心の柔らかい場所
マンションから出ると、すぐに遥の足が止まった。
何かに怯え、晶の陰に隠れる。
晶の服をつかんだ手は、微かに震えていた。
「どうしたんだ?」
遥が見ていた先に視線を移すと、若い青年が立っていてこちらを見ていた。
その顔には、どこか見覚えがある。
「もしかして、はるちゃん?」
遥がビクッとして、ぎゅっと服をつかみ直した。
晶も、記憶の片隅にあった顔と一致する。
「てめぇ」
それは、直樹に頼んで調べてもらった中の顔写真。
いたずらした近所のお兄ちゃん、かもしれない中の一人だった。
「探してたんだ。はるちゃんのこと。話がしたくて」
遥の呼吸が荒くなりそうな気配を感じて、晶は青年を睨んだまま、遥の背中に手をまわす。
「大丈夫だ。俺がいる」
穏やかな低い声。
遥はぎゅっと服をつかみ直して、コクンと頷いた。
「ゴメン、ゴメンね。あんなに怖がるとは、思ってなかったんだ。あの時は、その」
当時のことを話そうとする青年に、遥は首を振りながら晶から離れる。
「どうしたんだ。ハル」
つかもうとした手をすり抜けて、遥は逃げるように駆け出した。
「おい! ハル!」