女嫌いと男性恐怖症

 やみくもに走っていた足を止める。

 考えろ。あいつがどこに行くか。

 晶は思い出していた。

 直樹からもらった資料。
 少しの間だけ、遥の家の近くに住んでいたさっきの男。

 確か、遥が小学生で男は中学生の時だった。

 未遂だった事実に安堵すると共に、自分の軽薄な行動を猛省する。

 俺は自分の気持ちを抑えられずに、あんな若造の、しかもそいつの中学の頃と同じ失態を犯したのか。

 同じ……。

 昨日のことを思い出す。

 首すじに触れた唇。そして。

 あいつと同じなんかじゃない。
 ハルは、俺に。

 握りしめたままだったスマホの振動に、思考を停止させる。
 かかってきた電話番号は、知らないものだった。

 嫌な予感がして、急いで出る。

「はい」

「ごめんなさい。勝手に電話番号を聞いて。でもどうしても気になって」

 電話をしてきたのは、陽菜だった。

 知っている相手にホッとする晶に、陽菜は話し出す。

「遥ちゃんが、晶くんの前からいなくなったのって」
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