女嫌いと男性恐怖症

 晶の頭に、陽菜の言葉がこだまする。

 遥ちゃんがいなくなったのは何かされた事実よりも、今はそのことを晶くんに知られるのが怖かったんじゃないかしら。

 晶は首を振って、一歩近づく。

「そんなことで、ハルは穢れたりしない」

 そのことを知って幻滅するような想いなら、とっくにどうにかなってる。

 そうじゃないんだ。

「でも、私はそういうこと、できない。大人にはなれない」

 また首を振って一歩近づく。

「俺も同じようなもんだ。自分がガキだって、ハルといると思い知る」

「でも、アキはちゃんと生活できてる。仕事だってちゃんとして」

「ハルだって、仕事始めただろ?」

 また一歩近づく。

 小さい展望台。もう遥は目の前だ。

「私には、居場所がない。どこにも」

 弱々しく言った遥の体に、腕をまわす。

「俺の居場所はハル、お前だ。もうどこにも行くなって、言っただろ?」

 やっと捕まえた。

 何度離さないと誓ったことか。
 もう本当に、離したくないんだ。

 だから。
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