女嫌いと男性恐怖症

 買い物を済ませ、マンションのドアを開けるとグレーの何かが足元を通った。

「にゃお〜ん」と鳴いたそれは、グレーの毛並みの猫だった。

「おい。ハル、お前か」

「はい。すみません」

 部屋の奥から声がした。

 晶の声色から、猫を入れてはダメだったことを察したようだ。

「今から猫と外に出ます」

 急いで猫を抱っこして、出ようとする遥の首まわりの服をつかむ。

 猫と同じグレーの部屋着が、ふわっとこちらに戻ってきて、中身も一緒に戻った。

「おい。外に出て、男に会ったらどうするんだ」

「大丈夫です。早めに見つけて逃げますから。さっきもグレちゃん迎えに行った時に、そうしました」

「はぁー。ちょっと待ってろ」

 また面白がられることが目に見えていたが、仕方なく直樹に電話した。

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