女嫌いと男性恐怖症
「晶くん家に私一人で行くなんて」
そうつぶやきながら、陽菜は1階でインターホンを押す。
「開ける」
ぶっきらぼうな声がして、扉が開いた。
中に入って扉を閉めると、ウィーン、ガチャンとオートロックで鍵がかかった。
部屋の真ん前までいくエレベーターに乗り、降りるとドアが開いた。
「悪いが、早く持ってってくれないか」
そう言った晶の足元から「にゃお〜ん」と可愛らしい猫がお出迎えしてくれた。
「直樹が大笑いで電話してきたから、何事かと思ったわ。大丈夫。ちょうど飼いたいって言ってた知り合いがいるの」
そう言って抱き上げると、持ってきた猫用のキャリーバックに入れた。
その後に「遥ちゃんは大丈夫?」と陽菜は心配そうに聞く。
「まぁ」とだけ言って「悪かったな。このためだけに」と、言うと晶は扉を閉めてしまった。
呆然と立ち尽くす陽菜は、呟いた。
「ここ何日かで、晶くんとの一生分を話したんじゃないかしら」