女嫌いと男性恐怖症

 陽菜は猫を預かって家に帰る途中、直樹に報告の電話をした。

「晶くん猫アレルギーなんて、大変だったわね」

 電話の向こう側で、直樹がまた大笑いしている声が聞こえた。

「ハハッ。アキは猫アレルギーじゃないよ」

「え? でも」

「猫を引き取りに行った時に、目が赤くなったり、かゆそうにしてたか?」

 そういえば嫌そうにはしていたけど、かゆそうとか、目が赤いなんてことは。

「ただ、女みたいだから嫌いなだけさ」

「そんなにも、女嫌いなのね」

 あまりにもすごい女嫌いっぷりに、陽菜はふぅとため息をついた。

「ハハッ。陽菜も気づかないのか?」

 まだ直樹は楽しそうな声だ。

「何を?」

「女みたいな猫はダメなのに、女の子の遥ちゃんとは住んでるんだぜ」

 陽菜は、指摘されて気づくと目を丸くした。

「でも遥ちゃんは、大丈夫って」

 あの質問は二人にしたつもりだった。
「遥ちゃんは大丈夫?」遥はもちろん、晶自身も大丈夫かという意味で。

「アキも気づいてないのさ。あいつ頭いいんだか、バカなんだか」

 クククッと、再び直樹は楽しそうに笑った。
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