女嫌いと男性恐怖症
第5話 女嫌いのわけ
「夕飯を作るつもりだ。何がいい?」
「あ、準備はしてあるんです」
さっき、直樹に電話したりしている時にキッチンへ入ってると思っていたら、準備したらしかった。
買ってきたものを上手に使って煮物におひたし、見事に和食になっていた。
「おばあちゃんとの暮らしが長かったもので。すみません。アキには似合わないですね」
おばあちゃん。
そういやそんなことを、直樹が言っていた。
煮物に箸をつけようと手を伸ばすと、「あの〜」と声がした。
「なんだよ」
「いただきます、を」
またか。と正直うんざりした顔をする。
「晩ご飯は、まだしたことないです」
心を読んだような発言に、大人の顔色ばかり伺って育った自分の幼少期と重ねてしまう。
「なんだよ。じゃ今回で終わりだな」
「あの」
まだ何か言いたそうな遥に、少しイライラする。
自分を、自分の嫌な頃を見せつけられているような気がして、嫌な記憶が蘇る。