女嫌いと男性恐怖症

 晶はベッドに体を預けると、天井を仰いだ。
 脳裏にショックを受けた、遥の顔が浮かぶ。

 クソッ。

 晶はベッドをたたくと、起き上がってダイニングへ戻った。

 バツが悪そうに、顔に手をあてながら話す。

「悪い。あんなの、ただの八つ当たりだ」

 怯えた瞳が、晶をとらえた。

 ここに来てから全然そんな素振りを見せないから忘れてたが、男性恐怖症のやつに怒鳴るとか何やってんだか。

 自分は女は嫌いだが、取り乱したことなんてなかった。
 ただ冷淡に無視するか、ただ仕事を進めるかだった。

 さきほど立ち上がった席に、もう一度座ると素直に非を認めた。

「悪い。怒鳴って悪かった。こんなの言い訳なんだが、俺の母親の話をしていいか?」

 コクンとうなずいた遥を確認してから、晶は話し始めた。

「俺の母親を語るには、どうしようもない父親から話さないといけない」

 こんな話、酒に飲まれてうっかり直樹に話しちまったくらいで、他で話したことなんてなかった。
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