女嫌いと男性恐怖症
「父親は最低なヤローさ。外に女を作ったんだ。その女とも会ったことはある。いやらしい卑しい女さ。気持ち悪い視線が、体じゅうを這うような感じがして吐き気がした」
嫌な気持ちを思い出して、気持ちを整えるようにふぅーっと深く息を吐いた。
「それで、母親は父親を許せなかった。たぶんその許せない気持ちが、俺に向かったんだな。俺は、女として育てられたんだ」
「え」
ビックリした顔をする遥に、ハハッと嘲笑した。
「笑っちゃうだろ? 子どもの頃は、チビで痩せててな。髪を伸ばしてれば完全に女さ。それを毎日、可愛い可愛いってな。腐ったババアだろ?」
つらそうな顔が、一段と歪んで続きを話した。
「で、この通りの声変わりで捨てられたのさ」
そう女とは思えない、この声で。
なのにこいつは、この声でさえ男に思えないという。
それを昔なら喜べたかもしれないが、今は嫌悪感を感じるだけだ。
「だから俺のことを綺麗だとか言われるのは、ちょっと。いや。それでも怒鳴ったのは、悪かった」