女嫌いと男性恐怖症

 今度は、静かに聞いていた遥が口を開いた。

「私は。隣のお兄ちゃんに、イタズラされたんです」

「は?」

 突然の告白に言葉を失う。

「な、何された」

 しばらく返事がない遥から、ハァーハッハァーと激しい息づかいが始まった。

 ハッとして、袋を持って急ぐ。

 何やってんだ。
 もろに、二次被害だろ。

 今の質問。
 一番、聞いちゃいけない質問だ。

「大丈夫か? 悪かった。思い出させて。何も考えるな。ゆっくり息を吐くんだ。俺の呼吸に合わせろ。細くでいいから、吐くんだ」

「ゆっくり、ゆっくり」との低い声と、背中をさする大きな手は、不思議と遥の心を落ち着かせた。

 なんとか袋を外せるまでの呼吸になって、さすっていた手を離す。

「わりー。触ると蕁麻疹でるよな」

 晶に言われて、ふと遥も思い出して不思議に思った。

 晶とのことで、何も変化がなかった。

「アキなら、私、大丈夫、です」

 遥の言葉に、晶は胸がギュッとつかまれた感じがした。
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