女嫌いと男性恐怖症
「仕方ないやつだな。ほら、これと、これと、これなんかも読みやすい」
ドサドサと、晶の腕の中に本を渡した。
晶が立っていたのは、心理学の棚の前。
腕の中にある本の一番上には「よく分かる過呼吸とパニック障害」との文字。
「なんだ。直樹も調べたのか」
「いや前に一度、そういう案件を担当したことがあってな」
「そうか」
本当は直樹が対応できた方が、あいつのためでもあるんだろうが。
そんなことを考えていた晶が、目を丸くする。
追加で、本の山に乗せられたのは『性犯罪被害にあった人へ』
「おい。なんでこんなことまで、知ってるんだ」
もしかして、俺の家に盗聴器でも仕掛けていったのか。
疑いの目を向けようと、本から直樹に視線を移すと目があった。
「アキらしくないな。このくらいアキなら分かりそうなもんだが」
確かに。かなりの男性恐怖症。
何かあったと思うのが、普通か。
しかし、小学生のクソガキ(男)と思っていた遥からは、想像できない内容だった。
昨晩のことさえなければ、完全にクソガキだと思っていた。