女嫌いと男性恐怖症

「それにほら」

 もう一冊渡されたのは『機能不全家族』

 その題名にハハッ。俺のことかと嘲笑すると、そういえば俺に似てたんだったあいつ。と思い出す。

「遥ちゃんと接するのは、アキのためでもあると俺は思ってる。だからこそ、アキが適任だ。何より、遥ちゃんがアキを選んだんだ」

 珍しく真面目な顔の直樹に、不機嫌な声を出す。

「直樹が、そういう真面目な話をする時は、面白がってる時だろ?」

 晶の言葉に直樹は、クククッと楽しそうな笑い声を上げると「バレたか」とますます笑う。

「ま、頑張ってくれ。人生の夏休みとでも思えよ。夏休みほど休まれちゃ、敵わないがな」

 晶がハハッと乾いた笑い声をあげると、「じゃ俺、仕事行くわ」と行ってしまった。

「人生の夏休みねぇ」

 ったく。長い付き合いは、これだから。

 そう苦々しく笑うと、直樹が勧めてくれた本の中から何冊か選んで、その他を棚に戻した。

 心の中に直樹への文句が浮かんではいたが、心は晴れやかだった。
 やっぱり長い付き合いってやつは、と笑った。

『性犯罪被害にあった人へ』の本を手を取ると、しばらく見つめた後、そっと棚に戻した。

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