女嫌いと男性恐怖症
「あ、でも上がっていくのは。と玄関先で帰られました」
何かまだ言いたそうな遥に、声をかけた。
気になっていたことだった。
「今までも思っていたが、俺には言いたいことはなんでも言えばいい。我慢されると、余計にこっちがストレスだ。」
晶の言葉に、遥はもじもじしてから、言いにくそうにボソッと言った。
「直樹さんの奥様は入ってはいけないのに、どうして私はいいんでしょう」
それを、お前が聞くか。
「それはこっちが聞きたい。どうして直樹はダメで、俺はいいんだ」
「それは」と言うと黙ってしまった。
またかこいつ。
「いいか。これはここに住む、ルールだと思うんだ。思ったことは話せ」
押し黙っていた遥は、持っていたパンの袋を置くと、晶の前にちょこんと座った。
そして、遠慮気味に答える。
手を膝の上で、握ったり開いたりしているのが見えた。
んっとにガキだな。
じっとして、話もできないのか。
「その、アキは男性も女性も超えた、何かすごい。私にも、分からないです」
男性も女性も超えたの辺りから、晶が大笑いを始めたため、遥はまた黙ってしまった。
「悪い。話の途中だな。でもおかしくてな。誰が、男も女も超えてるんだよ」
ハハハッと笑う晶に「だから話したくなかったんです」と少し不機嫌な顔をした。