女嫌いと男性恐怖症
第9話 誰のため
食べ終わるとまた本を読み始めたのは、何気なく言った「ごちそうさん」の言葉に居心地が悪くなったからだけではない。
読んでいる晶に「何か飲まれますか?」と片付けをしている遥が、お伺いを立てた。
「あぁ」と気のない返事をすると、再び読書に没頭する。
テーブルに運ばれたグラスに見もせず、口をつけた。
中身を口に運んだ瞬間に、ハッとして遥に視線を移した。
「すみません。苦手でしたか?」
グラスの中身は、直樹の家で何度か飲んだことのある味だった。
「ルイボスティだそうです。おしゃれなお茶みたいでしたので、お好きかと」
あぁ、直樹の奥さんが食材と一緒に持ってきてくれたのか。
納得すると、もうひとくち飲んだ。