女嫌いと男性恐怖症

 リビングに戻ると、ダイニングの方にいた遥の背中が、揺れたのが分かった。

 起きたのか。そう思って手元を見ると、さきほど晶が読んでいた本があった。

 あぁ。一人が長いと気づかなかったが、そういう色々を自室に持っていかないとな。

 そんなどうでもいいことが、頭を巡った。

「あ、あの。すみません。片付けようと思って」

 怯えた様子のまま、遥は続けた。

「あんなに集中して読んでいた本は、どんな難しい本だろうって。すみません。勝手に、あの」

 やっぱりいちいち面倒くせーのは、相変わらずか。

「別に読んだっていい。というか、読んだ方がいいぐらいだ」

「じゃ、やっぱりこの本って」

「そうだ。お前の症状の本だ」

 黙ってしまった遥の前を通り過ぎると、晶はキッチンに入った。

「今日は俺が作ろう」

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