女嫌いと男性恐怖症

「そういえば、いただきます、を朝は言い忘れてたか」

 自分で言って
 しまった。
 しれっと忘れたふりでも、しときゃ良かったぜ。
 そんな気持ちになって、サラダを手に取った。

「え。いただきます、しないんですか?」

 返事をしたくない気分になると、汗をかき始めたグラスを見るともなく見つめたまま食べ続けた。

 しょんぼりした遥も、サラダを手に取った。

 晶は食事をしていても、別のことに思いを馳せる。

 確かに、似ているとは思っていた。
 だからって、遥のために読んだ本が、自分のことを言われているように感じるとは。

 苦々しい気持ちになると、ブッーブッーと電話がかかってきた。直樹だ。

「悪いな。失礼する」

 まだ食べかけの食事をそのままに、晶は部屋に行ってしまった。

 遥は、その背中を寂しそうに見送った。

 少しは打ち解けられたと思ったのに、また晶が冷たい壁をまとってしまったのを感じていた。
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