女嫌いと男性恐怖症

  足元の落ち葉を踏むと、軽い音がした。
 そんな小さな変化に、のんびり心を傾ける時間の使い方をしてこなかった。

 やっぱり人生の夏休みか。
 そんなことを思っていると、自分をまじまじと見る直樹の視線に気付く。

「なんだ?何か言いたそうだが」

「いや、言うと怒りそうだからやめとく」

 愉快そうな顔をする直樹に、聞くだけ胸くそ悪くなりそうだと、あえて追求しなかった。

 聞いてこない晶に、それはそれで直樹は楽しそうな顔をした。

「じゃ俺、仕事行くわ」

「あぁ。忙しかったら俺も行くから言えよ」

 直樹は、楽しそうに手を振った。

「バーカ。仕事より夏休みの方が大切だぞ。それに休みなのにスーツかよ。いい加減、私服も買えよ。それ夏休みの宿題だな」

 どこまでが本気なんだか。
 晶は呆れつつ、ありがたく休むことにした。

 そしてやっぱりスーツしかないのは、不便か。
 今までは思わなかった、そんなことまで思いながら来た道を戻った。

 晶と別れた後、仕事に急ぐ直樹は「まさかのアキが柔らかくなるなんてな」そうつぶやくと、ニマニマした笑みを浮かべていた。
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