女嫌いと男性恐怖症
第11話 コーヒー
マンションに帰ると、遥がご飯を食べずに待っていた。
「先に食べてろって、言えば良かったな」
晶の言葉に、遥は首を振った。
「一緒に食べたいんです」
そう言った遥は、席を立って味噌汁を温め直す。
毎日一緒に食べるのが夢だったんですとか、面倒くせーこと言い出すなよ。
そうは思っても、「一緒に食べたい」の言葉は、晶の心を温かくした。
「あの。直樹さんが来たのは」
少し不安そうな目をしている遥に、説明が必要だったかと反省する。
「昨日読んでた本で知ったんだが、少しずつ苦手なことに自ら挑むと、自信がついて克服できるらしい」
味噌汁をかき混ぜる手が止まる。
「苦手なことを、克服」
ぶつぶつ呟いて、何かを考えている遥の手元で味噌汁がグツグツと煮立っていた。
「おい。味噌汁は大丈夫なのか?」
「あっ!」
慌てふためく遥に、こいつ大丈夫かよ。と、無謀なことに挑戦している気分になっていた。