女嫌いと男性恐怖症
「余計なことを言うな」
直樹に忠告するように言っても、意味がないのは晶もよく分かっていたが、言わずにはいられなかった。
チッ。調子に乗りやがって。
「なんだよ。アキも変わったなぁって思ってな。ただの感想だろ?」
それをわざわざハルの前で言うのが、たち悪いって言うんだよ。
しかもそれを、分かってて言うんだから腹黒い。
言いたい文句は山のようにあったが、言ったら言っただけ、直樹を楽しませることになるのが目に見えていた。
「陽菜も楽しみにしてるぞ。慣れてきたんだ。俺の家にも遊びに来いよ。二人で」
わざわざ「二人で」を強調する直樹にげんなりした顔を向けつつも「あぁ」と気のない返事をした。
「ったく。人に頼んどいて、その態度だもんな」
直樹が珍しく、拗ねたような声を出す。
そりゃハルが慣れるように、家に来てくれと頼んだのは俺だが。
こいつに頼んだのは、間違いだったか。
いや。ハルには正解だったみたいだが、俺に被害があるとは。
どうせ拗ねた真似だけだろうと、冷たい視線を送っても気に止める様子もない。
「じゃ、また明日も寄るわ」と言う直樹に、二度と来るなと悪態をつきたいのを飲み込んだ。