女嫌いと男性恐怖症

「この子、遥ちゃんって言うんだけど、遥ちゃん男性恐怖症らしいの」

「男性恐怖症!」

 思わず出た直樹の声に、遥はビクリと体を揺らした。

「しまった」と、直樹は口を押さえて肩を竦める。

「そう男性恐怖症だそうなの。で、ひどい時は近づかれただけで過呼吸になったり、蕁麻疹が出てしまうそうで」

 蕁麻疹までは、出てないようだ。
 触れていたら、まずかったかもしれない。

「それで、倒れた時も男の人はイヤとか言ってたんだな」

 晶が納得した様子でつぶやくと、直樹が晶と遥を交互に見比べた。

「なぁ。遥ちゃん。アキのことは、大丈夫なのか?」

 直樹の話すのを怯えながら聞いて、ボソボソっとうつむいて何かを話した。

 何も聞き取れなかったそれを、陽菜がもう一度聞き返してくれた。

 ボソボソと、陽菜に耳打ちする。

「あら。そうなの」

 驚いた様子の陽菜は「二人にそう伝えるわね。」と遥に確認してから、二人に向かって口を開く。

「今も男の人に見えないって。晶くんのこと」

 ハハハッと、直樹はテーブルに手をついて笑っている。
< 8 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop