女嫌いと男性恐怖症

 晶は相変わらずのスーツのまま、リビングで待つ。

 遥の服は、直樹がたまに持ってきてくれる、陽菜から預かる服の中に、出掛けられる服も入っていたようだ。

 世話をかける陽菜に、遥は恐縮しっぱなしだったが、陽菜は陽菜で「妹ができたみたいで嬉しいの」と喜んでいるようだった。

 リビングに来た遥は、着替え終わっていて恥ずかしそうにうつむいている。

 女でも男でも大丈夫そうな薄手のニットに中にシャツを着て、ズボンがダボッとして見えるのは遥が細すぎるのかなんなのか。

「変でしょうか」

 さすが直樹の奥さんだと思えるチョイスで、遥に似合っていた。

 ズボンにしたのは、晶のためなのか、遥のためなのか。
 女オンナしていない服装に、晶は少しホッとした。

「そんなもんだろ」

 気のない返事をしながらも、頭をグリグリすると顔を見ないようにして玄関に向かう。

 玄関でハッとした晶に、遥はちゃんと手に持っていた靴を見せた。

「靴も用意してくれてました。陽菜さんってすごいです」

 女って超能力を使えるよな。
 直樹の奥さんも、ハルも。

 自分の行動を見越した準備の良さに、筋金入りの女嫌いが発動しそうになるのを抑えることに精一杯だった。
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