女嫌いと男性恐怖症
カランカラン。
重い扉がドアベルを鳴らす。
「いらっしゃい。あぁ。アキくん久しぶりだね。おや。お連れさんがいるとは、珍しい」
優しそうなマスターが目を細めた。
趣があるお洒落なカフェ。
大きな公園の近くにあるお店は、公園の緑や紅葉した赤、木々の茶色、全てに溶け込んでいて同じ風景の中の一部に思えた。
知らなければ通り過ぎてしまいそうな、そんな小さなお店だった。
「俺はブレンドで、こっちにはココアを頼むよ」
カウンターの一番端に遥を座らせると、晶はその隣に座った。
遥はお洒落なお店に気後れするかと思ったが、意外にも落ち着く自分に不思議な気持ちになり、晶を盗み見た。
長い手足が、カウンターでは邪魔のように思える。
顔の前で重ねた両手の指までもが細くて長く、男の人の手なのに綺麗だと思った。
でもそれを口にすれば、機嫌を損ねてしまう。