女嫌いと男性恐怖症

 カランカラン。

 重い扉がドアベルを鳴らす。

「いらっしゃい。あぁ。アキくん久しぶりだね。おや。お連れさんがいるとは、珍しい」

 優しそうなマスターが目を細めた。

 趣があるお洒落なカフェ。

 大きな公園の近くにあるお店は、公園の緑や紅葉した赤、木々の茶色、全てに溶け込んでいて同じ風景の中の一部に思えた。

 知らなければ通り過ぎてしまいそうな、そんな小さなお店だった。

「俺はブレンドで、こっちにはココアを頼むよ」

 カウンターの一番端に遥を座らせると、晶はその隣に座った。

 遥はお洒落なお店に気後れするかと思ったが、意外にも落ち着く自分に不思議な気持ちになり、晶を盗み見た。

 長い手足が、カウンターでは邪魔のように思える。

 顔の前で重ねた両手の指までもが細くて長く、男の人の手なのに綺麗だと思った。

 でもそれを口にすれば、機嫌を損ねてしまう。
< 84 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop