女嫌いと男性恐怖症

 ふわっと香ったコーヒーの匂いとガリガリガリという音にそちらを見ると、マスターが豆を挽いていた。

「素敵ですね」

「あぁ」

 ここは外とは、時間の流れ方が違うように感じた。

 静かな店内ではガリガリガリという音と、趣のある店内にマッチしているジャズが小さく流れるだけだった。

「はい。お待たせ。ブレンドとココアね。これはおまけ」

 マスターは白ひげをたくわえた口をニコッとさせ、可愛いウィンクをした。

 それぞれのソーサーには、包みに入った小さな白い四角が乗っていた。

「ここのチーズケーキも絶品だ。食べてみるといい」

 そう静かに教えると、晶はコーヒーの香りを楽しんでから口に運んだ。
 遥も、ココアに口をつける。

「おいしい」

 遥の言葉に晶が優しく微笑んだのが、横顔から少し伺えただけだった。

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