女嫌いと男性恐怖症
飲み終わった頃に、マスターが晶たちの前に来た。
「お口に合いましたか? お嬢さん」
「はい。とっても美味しかったです」
遥にニコニコするマスターが、声を落として言った。
「一番奥は、アキくんの指定席なんです。お店に来ても空いてないと、帰ってしまうほどの。そこに自ら座らせるとは。おっと、戯れ言が過ぎたようですね」
苦々しく笑った晶を見て、マスターは遥にまたウィンクをした。
「マスター。豆を挽いてたあれは、どこに行けば手に入る?」
マスターがお客が来るたびに、ガリガリとしていた物を指差して質問した。
「コーヒーミルですか? 家でも挽くのなら、それ以外にも必要なものが。よろしければオススメの豆と一緒に、セットでお譲りしましょう」
お店の奥に行くと、一式が入ったらしき物を持ってきた。
「コーヒーに惚れ込んでくれて、揃えたいって方がたまにいらっしゃるんですよ。それで一式を置くようにしたんです」
「そうか。助かる。マスターのオススメなら間違いない」
席でそのままお金を払うと、店を出た。