女嫌いと男性恐怖症

「は? 何を言ってんだ。俺の声を聞いてもか?」

 いつもよりも、もっと低めに声を出した。
 それなのに陽菜の陰に隠れつつ、うんうんとうなずく。

 確かに直樹が話した時と、晶が話した時とでは違う。
 晶が話しても、怯えた目では見ていない。

 しかしこれだけ身長があるのに、女なんて片腹痛い。
 晶は不機嫌そうな顔をすると、そっぽを向いてムスッと頬づえをついた。

 アハハハハッとまだ笑っていた直樹が、晶に「試しに近づいてみたら。」と言うので、仕方なく立ち上がる。

 近づけばさすがに分かるだろう、と思ったのだ。

 一歩、また一歩と近づいて、とうとう目の前まで来た。

 チビの遥を長身な晶が見下ろす。

 陽菜が警戒しつつも、遥と晶から離れた。
 それでも大丈夫そうだった。

「マジかよ」

 晶を見上げた遥の瞳はどこまでも澄んでいて、汚れを知らない小学生のようだった。

 小学生でも女は女。
 しかし遥は女とは思えない、どちらかといえば小学生の男の子に思えた。

 あの甘ったるい匂いは、気のせいだったのか。
 そう思っていると、後ろで声がした。

 晶は直樹の声を、背中で受け止めた。
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