女嫌いと男性恐怖症

「良かった会えて。インターホンを押しても出ないから、帰るところだったんだ。どうやら、俺の渡しておいたものが役立ったらしい」

 満足げな直樹に、もちろん晶は不機嫌な顔だ。

「なんだあれは。いくら直樹でもやり過ぎだろ」

 できるだけ冷静に言った低い声に、ハハッと乾いた笑い声をあげた。

「分かってないなぁ。アキは。俺のおかげで助かったんだろ? 感謝されてもいいくらいだ」

「感謝だと?」

 今にもブチギレそうな晶に、遥はハラハラしている。

「やめろよ。本気で遥ちゃんが不安定になるぞ」

 クソッ。腹黒男め。

 心の中で悪態をつくと、どかっとソファに座った。
 遥もオドオドしながら、いつものソファの端に座った。

 晶の向かいにある一人掛けのソファに、直樹も座る。
 すると遥は、そろそろと二人掛けのソファの晶側の端に移動した。

「ハハッ。遥ちゃんにも嫌われちゃったかな?」

 遥は、居心地の悪そうな顔をテーブルに向けたまま、返事をしなかった。

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