女嫌いと男性恐怖症
悪びれる素振りのない直樹は、普通に話し出す。
「遥ちゃんの住所は、宙ぶらりんになっていたんだ。そのままにはしておけないだろ?」
そんなの知るか! と、怒鳴りつけたくても、遥がいてはできなかった。
いくら激昂していても、遥は悪くないのは分かっている。
クソッ。
直樹のやつ、ハルがいる時を狙ってやがったな。
恨めしく直樹を見ると、ククッと一人愉快そうだった。
「移動するにしても、相談があっていいはずだ」
それじゃ面白くないだろ? と言いたそうな直樹が「まぁまぁ。いいじゃないか。結果良ければ全て良しだろ?」と丸く収めようとしていた。
何を言っても、直樹相手では自分のイライラが解消されないことに気づく。
馬鹿らしくなると、背もたれに深くもたれた。
そして、はぁと息をつく。
「ハル。悪いが何か飲み物、頼めないか」
「はい」
心配そうな視線を残して、遥はキッチンの方へ向かった。