女嫌いと男性恐怖症
「なんだ。人払いして、俺は叱責されるか?」
とぼけた顔で明るく言う直樹に、ますます馬鹿らしくなった。
「怒号を浴びせたいなら、もっと前にハルを他にやってる。ったく相変わらずだな。直樹は」
フフッと笑う直樹は、遥のためになることで晶が本気で怒らないことが、分かっているようだった。
それがまた、晶は気に食わない気分だった。
いや。本気で怒ってはいたのだが、他のことが気になっていた。
「まだ仕事中だろ? わざわざ家に来て。何か用があったのか?」
あぁ。
と、思い出したように、直樹は口を開く。
キッチンの遥を、気にしながら。
「あの人が、事務所に訪ねてきたぞ」
思いもよらない言葉に、晶は、はぁーっとため息をついて顔を歪ませた。
「そんなことのために、わざわざ来たのか」
嫌なことを思い出し、不機嫌な声を出した。
出来れば、忘れていたかった。
「まぁ仕事で、近くに来たのもあるが。あの人が、ここに来るのはまずいんじゃないかと思ってな。遥ちゃんが」
そこまで話すと、遥が飲み物を運んでこっちに来そうな雰囲気を感じ、話は中断された。
別に、ハルには関係ないだろ。
そうは思っても、浮かない気分だった。