女嫌いと男性恐怖症
第15話 涙
「あぁ。起きたか。」
経済新聞を片手に、コーヒーを飲む晶が声をかけた。
遥は、いつの間にかソファで眠ってしまったらしかった。
いつものように、リビングの一人掛けのソファに座る晶の姿をとらえた遥は、ハラハラと泣き出した。
「おい。どうしたんだ」
読んでいた新聞は、テーブルに投げ捨てられた。
二人掛けのソファが、初めて二人掛けの意味をなすと、遥は晶の腕にしがみついた。
初めて会った時を思い出す、そんな光景だった。
ただあの頃とは違い、振り払おうとはせずに空いている方の手で、優しく背中をトントンとたたく。
「大丈夫だ。怖い夢でも見たのか? 今日は出かけたから、刺激が強過ぎたのかもな。急ぎ過ぎたか。悪かった」
力なく首を振る遥に「大丈夫だ」そう優しく穏やかな声をかける。
背中は、優しくトントンとし続けた。