ラブリー
“立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花”は、まさに佐和子のためにある言葉だと思う。

男性社員の視線は佐和子に集中している。

その視線に気づいていないと言うように、佐和子は小宮課長と一緒に仕事をしていた。

こうして並んで見ると、本当にお似合いの2人だな。

容姿は美しい、そのうえスタイルもとてもいいのに、佐和子には彼氏がいない。

本人曰く、25年間の人生の中で彼氏ができたことは1度もないのだそうだ。

性格的にも特に問題はないと思うんだけど、どうしてだろう?

やっぱり、学生の時から高嶺の花的存在だったから誰も手が出せなかったからとか?

…よくわからないんけど。

そう思っていたら、ポンと肩をたたかれた。

「手が止まってるぞ」

その声に後ろの方に視線を向けると、同じく同期の貝原三平(カイバラサンペイ)が立っていた。

彼の手には丸めた書類が握られている。

どうやらこれで、わたしの肩をたたいたようだ。
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