ラブリー
えっ、この声って…。

声が聞こえたその方向に視線を向けると、
「か、課長…」

三平が恐る恐ると言った様子で呟いた。

わたしたちの目の前にいたのは、小宮課長だった。

「えっ、ええっ?」

三平は訳がわからないと言う顔をしている。

それはわたしも一緒だ。

何で小宮課長がここに、それもわたしたちの目の前にいるのだろう。

「約束でも、しょせんは酔った勢いで交わしたんだろう?

そんなものは約束だなんて言わないよ」

小宮課長は柔らかく諭すように、三平に言った。

「約束を果たすためにプロポーズをしても、後で後悔するのが目に見えてるぞ。

ああ、それと…」

小宮課長はそう言うと、わたしを椅子から立ちあがらせた。
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