ラブリー
よかった、佐和子の耳には届いていなかった。

わたしたちは顔を見あわせると、ホッと息を吐いた。

三平がわたしの口をふさいでいた手を下ろすと、
「まあ、要するにお前と小宮課長がつきあったことが気に入らないんだよ。

昨日まで上司と部下、ただの幼なじみの関係でいたのに、今日になって男女交際することになったから」
と、言った。

「それで、わたしに“別れろ”って言ったの?」

そう聞いたわたしに、
「ああ、そう言うことだ。

佐和子のヤツは小宮課長が好きだから、なずなにそんなことを言ったんだよ。

でなきゃ、にらみつけてきやしねーよ」

三平は言い返した。

「そうだったんだ…」

呟くように返事をしたわたしだけど、よくよく振り返ってみたら納得できる事実である。
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