ラブリー
「さすが、小宮さんですね。

部下のお気持ちをわかっていらっしゃいます」

担当者はハハッと豪快に笑いながら小宮課長の肩に手を置いた。

「どうもありがとうございます」

小宮課長は笑いながらお礼を言った。

バレていなくてよかった…。

手を離したことと名前で呼んでくれなかったことに寂しさを感じていたなんて、とてもじゃないけど言えないや。

小宮課長に変な勘違いを与えてしまうのと同時に、子供の頃に封じ込めた彼への恋心が再燃してしまいそうだ。

それから見学は順調に進み、お昼の時間を少し過ぎた辺りで無事に終わった。

「遠いところから足をお運びいただき、ありがとうございました」

担当者に見送られて、わたしたちはタクシーで現場を後にした。
< 57 / 108 >

この作品をシェア

pagetop