ラブリー
そう思っていたら、
「お兄さん、よかったですね」

大家さんが小宮課長に話しかけた。

お兄さんって、小宮課長のことだったの?

「妹さん、ご無事でしたよ。

じゃ、私はこの辺で」

大家さんはペコリと会釈をすると、この場から立ち去った。

部屋にはわたしと小宮課長の2人きりだ。

チラリと小宮課長に視線を向けると、
「ごめん、お兄さんだなんてウソをついて」

彼は謝ってきた。

「でも連絡しても繋がらないし、貝原と池山に聞いても知らないとしか言ってくれないから」

小宮課長と連絡をとるのが怖いからスマートフォンの電源は切って、タンスの引き出しの中にしまっていた。

「かと言って、会いにくると言うのはないんじゃないですか?

しかも、わたしの兄だなんてウソをついて」

呟くようにわたしが言ったら、
「でもこうでもしなきゃ、君は逃げるだろう?」

小宮課長が言い返した。
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