完璧執事の甘い罠
なんてことは全くなく。
私は、しばらくしてやってきたジルに連れられ大きな広間にやってきていた。
「お茶の用意じゃなかったんですか」
お茶なんて、出してもらってないしと抗議すれば。
「王さまの公務が思いの外早く終えられたので」
そうばっさりと言われた。
言い方がとても冷たく厳しい人。
「ああ、本当にありすそのものだ」
連れられた広間で迎えたのはひげを蓄えた恰幅のいい男の人。
おじいさん、というにはまだ若めの容姿。
それでも、この人が王さまなのだとすぐに分かった。
なんと言うかオーラというか、纏う空気がピリッと重苦しいのだ。
「そなた、名をなんと言う?」
「・・・ひな。日下部ひな」
「くさかべ・・・?ひな、が名か?」
「え、はい。日下部は名字です」
予想外の問いかけに首をかしげる。
よくわからない。