完璧執事の甘い罠
嘔吐を繰り返し、そのまま意識を手放したひな様を連れ城に戻る。
王さまに状況を報告し、ひな様の元へと戻る。
「・・・よく眠っている」
「そうですか」
側についていてくれていたノエルが、私を見るとそう告げる。
ノエルの顔も、悔しそうに歪んでいる。
「頬に、殴られた跡。それから手首の縄の跡、腕や身体に酷い擦り傷・・・ってところだ」
「そう、ですか」
「一番心配なのは、治る身体の傷よりも、見えにくい心の傷だな・・・」
とても恐ろしい思いをされたことだろう。
もしかすれば、異世界ではこんな思いしたことなどないであろうから。
どんなことでもすると心に誓っていたはずなのに。
護ることができなかった。
「捕まえた奴の調書は俺がする。あいつらに頼んだやつがいるはずだ。すぐに探し出してやるから」
「・・・はい。お願いします」
「悔しいのは、お前だけじゃないからな」
「わかっています。ありがとうございます」
ノエルは私の肩を叩き部屋を出ていった。