完璧執事の甘い罠


「・・・ジル・・・?」

「はい、ひな様」




胸が苦しい。
弱々しいひな様の声。



「ジル・・・、ジル・・・」



ポロポロと溢れだした涙を、そっと拭う。
どれ程の傷をつけてしまったのだろう。
どうすれば、償いきれるだろう。



「ひな様、申し訳ございません」

「・・・ジル」




何度も私を呼ぶ声に胸が苦しくなって。
なんと言っていいのかわからず、唇をかみしめた。



そして、ひな様はそれからも眠ってもたびたび悪夢に魘されては目を覚ます、それを繰り返し十分に眠ることができないまま朝を迎えてしまった。




全ての予定をキャンセルし、ひな様のお側にずっとついているが。
ひな様は一言もしゃべらぬまま、ベッドの上でぼんやりとしていた。
そんなひな様に、なんと声をかけていいのかわからずただ見守るだけ。

情けない執事だ。



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