完璧執事の甘い罠


「あの、ジルさま!お願いがあります」




ひな様の部屋を少し離れ必要なものを手にし戻ろうとしていたところに、最近は言った新人メイドのエリシアが神妙な面持ちで話しかけてきた。




「なんでしょう。少し、急ぐのですが」

「すみません。あの、姫様のお見舞いに行かせてはいただけないでしょうか」

「お見舞い?あなたはまだ入って間もない新人でしたよね?そのような者が姫であるひな様を見舞うなど」

「わかっています!それでも、一目でも・・・。この間、姫様に優しいお言葉をかけていただいたのです。未熟な私を励ましてくださったのです。ですから・・・」



必死に訴えるエリシア。
しかし、簡単に頷くわけにはいかない。

手引きしたものの正体がわからない以上、誰もを疑って当然。

なるべく、ひな様に近づく者は最低限にしなくては。




「その気持ちだけはいただいておきます。少し色々なことが落ち着き、ひな様自身も落ち着かれてから時間をとりましょう」

「・・・はい。それで構いません。お願い致します」




そう答えるのが、精一杯であった。




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