完璧執事の甘い罠


「ジル、ちょっといいか」

「はい」



ひな様の部屋の前で今度はノエルに呼び止められる。
ノエルの顔にも疲労の色が伺える。

昨日から一睡もしていないのであろう。



「なにか、わかったのですか」

「・・・手引きした者が判明した。その者も、もうすでに拘束し地下牢へ入れている」

「そうですか。素早い仕事、感謝します。それで、その者というのは」




なんとなく、予想がついていた。
ひな様に、逆恨みを抱くような者の仕業であるならば。




「最近、クビになったメイド二人に依頼されたと、はっきり証言した」

「・・・やはり、そうでしたか」




異世界から戻られたひな様が突然姫として現れたことに不服を持っていたあの二人。
ひな様の温情もあり、次の働き場を用意した上での解雇という軽い処罰にしたというのに。


温情など、必要なかったのだ。
恩を恩とも思っていない。
温情を温情とも思っていない。


ただ、解雇されたという事実を嘆き恨んだ結果の犯行。



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