完璧執事の甘い罠
恐怖の記憶
目を閉じれば何度でも夢に見る。
あの時の記憶。
怖くて、絶望的で、気持ち悪い。
ねっとりとした手の感覚や、塞がれた唇の感触。
低くドスのきいた声。
真っ暗な闇の中。
忘れたくても忘れられない。
でも。
「これじゃ、ダメだ・・・」
あの日から、数日が経って。
相変わらずずっとベッドの上で過ごす。
ジルははれ物に触るように私に関わり、悲しげな表情で声をかける。
自分を責めている様が丸わかりだった。
執事だから。
私を護るといったから。
きっと、責めているんだろう。
恐怖は忘れられないが、日が経つにつれ落ち着きは取り戻すことができた。
少し冷静になって、自分の状況を考える余裕もできた。