完璧執事の甘い罠
ジルは、いつだって私の味方で。
私はいつだってジルの優しさに甘えてしまう。
「おやすみなさいませ、ひな様」
「おやすみ、ジル」
夜も更け、私がベッドに横たわるのを見届けると、ジルがそう言って明かりを消した。
トクン、と胸が騒ぐ。
「失礼します」
ジルが部屋を出る。
残された真っ暗な部屋。
冷や汗が滲む。
暗闇が怖くなっていることに今気づいた。
これまでは、ぼんやりとしていたし、いつの間にか眠っていたことが多かったから。
怖い。
「・・・っ」
ギュッと手を握りしめる。
声が、聞こえる気がする。
そんなはずないのに。
不気味な男の嘲笑う声が。
こみ上げてくる涙がとめられない。
声を殺して泣いた。