完璧執事の甘い罠
「この世界には、言い伝えがあってな。10年に一度異世界との道が繋がるのだと。ワシも、信じてはおらんかったが10年前、我が娘アリスが突然姿を消したのだ」
「え・・・」
「この世界のどこを探してもどこにもおらなんだ。絶望し、諦めておったが10年経った今、生き写しの娘が目の前に現れた。異世界の言い伝えは真であったのだ」
10年前・・・。
だから、時間の計算が・・・。
時空の歪み、それが本当ならあり得るのかな。
この世界で10年前にいなくなった王女様。
それがお母さんで、お母さんは日下部ありすとして地球で生き、私を生んだ・・・?
そんな事、簡単に信じられないよ。
「あれをこちらに」
「はっ」
側に控えていた側近の人に指示を出すと、滑車に乗せられた大きな額縁に入った絵が運び込まれた。
そこに描かれていたのは・・・。
「お母さん・・・?」
そう、お母さんによく似たドレス姿の女の人の絵だった。
右目の下にほくろ・・・。
お母さんの同じ場所にもあった。