完璧執事の甘い罠
ガチャ
扉が静かに開く音がする。
静かな足音が近づいてくる。
でも、その足音はどこか優しく感じて恐怖はない。
それでも、涙は止まらなくて。
押し殺した声。
「ひな様・・・?」
伺うような声。
私の異変に気づいたのか、そっと布団をはぐる。
「ひな様!」
私が泣いていることに気づいたジルは、慌てたように私に手を伸ばした。
私の身体を抱き起こし背中をさすってくれる。
「恐ろしい夢でも見ましたか?」
「っ、・・・ふ、・・・」
言葉にできなくて、ただ首を横に振った。
縋るようにジルの胸に顔を埋め、ギュッと服を掴んだ。
少し、躊躇いがちに私の背中に伸ばされたジルの腕。
「暗闇が・・・」
「怖いのですね。すみません。気づかず・・・。明かりをつけましょう」
優しい声。
さっきまでの怖さが嘘みたいに。
心が穏やかになっていく。
ジルの温もりに包まれると。
満たされたような心地になる。