完璧執事の甘い罠
移りゆく感情
上書きしてほしい。
そう願った私に、躊躇いながらも口づけをしてくれたジル。
ジルの気持ちは・・・。
「はぁ・・・」
何度目のため息だろう。
朝から何度も息をつく。
考えるのは、ジルの事ばかり。
だって、あの男にされた時にはただただ嫌悪感しかなかったキスが。
ジルだとまるで違った。
ドキドキして、甘くて、キュウって心臓が締め付けられるみたいな。
最初はためらっていたはずのジルは、どうしてしてくれる気になったんだろう。
執事として・・・?
それとも・・・。
ジルに限ってそれはないか。
執事として、主である私の言う事をきいたに過ぎないよね。
そう考えると、胸が締め付けられるように痛んだ。
「なにやってんだ」
「・・・あ、ノエル」
いつの間にか部屋に入ってきていたノエルが、怪訝そうに顔を顰めた。