完璧執事の甘い罠
「うそ・・・だ・・・」
だって、信じられない。
ここが異世界だってことも簡単に信じることなんてできないのに。
お母さんがもともとはこの世界の人だったなんて。
「戸惑うのは無理はない。だが、すべて真実なのだ。ワシはひなを歓迎する。我が国の姫として迎えよう」
「そんな、私は・・・」
「私の娘はアリスただ一人・・・。王位を継げるものがいなくなってしまって、困っておったのだ。ひなが来てくれたのなら心強い。そなたを王位継承者として迎え入れるつもりだ」
「お、王位継承者って・・・。困ります!私は・・・!」
「女王陛下はこれまでの歴史上初めての試みではあるが、きっとひなならよい女王陛下になれると信じている」
「ま、待って・・・」
勝手に話が進んでいくことに恐怖を覚える。
女王陛下とか、王位継承とか、姫だとか、そんなの勝手すぎるよ。
私はごく普通の女の子で。
生きるのが嫌になって、世界に別れを告げたの。
それなのに、異世界にやってきてそこで姫になるなんて、そんなのないよ。
私はただ、お母さんとお父さんに会いたかっただけなの。
二人にまた、愛されたかっただけなの。