完璧執事の甘い罠
「お、お前な・・・」
「ふふっ、ごめんね。ジル、心配かけてごめん。違うの。これは嬉し泣きだから」
「嬉し泣き・・・ですか」
それぞれ違う理由でホッとしたようなジルとノエル。
私は涙を指で拭うと笑って頷いた。
「私、ここにいていいんだよね」
「もちろんです。いて・・・くださるのですか?」
「え・・・?」
「ひな様は、もうこの世界など嫌になってしまわれたのではと・・・」
いつだって冷静で、きりっとした無表情のジルの瞳に浮かぶ若干の不安の色。
最近、わかってきた。
ジルには表情がないんじゃない、ただ薄いだけだって。
「そんなことない。確かに、今でも時折急に怖くなることがあるし、忘れることなんてできない」
「・・・はい」
「でも、私にはジルがいるから。ノエルがいるから。今は、そんな風に思えるから」
だから、乗り越えていける。
そう思えたことが奇跡。
「ひな様・・・」