完璧執事の甘い罠
「さっさと歩け」
「痛いわね!優しくしなさいよ!」
歩いていると騒がしい声に足を止めた。
なんだか、穏やかなこの場所に不釣り合いな声。
見ると、なにやら人が連なって歩いて行く姿。
兵士のような恰好の人たちが誰かを囲い歩いて行く。
囲われた人は、ロープで繋がれているように見える。
「こんなはずじゃ・・・、全部、全部、あの女のせいだ!」
「黙れ!騒がずついて来い!」
ロープで繋がれ騒ぎ立てる女の人。
その人には見覚えがあった。
「え・・・」
「ひな様!」
それに気づいた瞬間、伸ばされた手に視界を遮られ私の身体はジルに抱きかかえられた。
「ジルさま!?」
「お前たち、なぜ今、このような場所を通っている」
「す、すみません!午後より嵐が来るとの連絡が入り、急遽予定を繰り上げて護送する運びに・・・」
「それがなぜ私のところに通達が来ていないのです」
「申し訳ございません!何分急に決まったことでして・・・」
ジルの腕の中、私は戸惑いながらやり取りを聞く。
ジルの怒った声。