完璧執事の甘い罠


「・・・ない。・・・許さない!その女!あんたのせいで!!」

「黙らないか!」




女の人の怒号。
それは、私に向けられたものだと目を伏せられていてもわかった。

だって、それは。
あの時私の不満を口にしていたメイドさんたちだったのだから。





「さっさと連れて行きなさい」

「はっ!失礼いたします!」




兵士さんはそう言うとざっざっと音を立てその人たちを連れ歩いて行った。
遠ざかっていく足音が完全に消えた後、ようやく私はジルの腕から解放される。




「ひな様・・・」




心配そうに呼ばれる名前。
私は小さく深呼吸をして顔をあげる。
そして、安心させるようににこっと笑った。



「散歩、疲れちゃったね。戻ってレッスンの続きをしよう」

「・・・はい」




ジルはそれ以上何も言わず、私もなにも聞かなかった。
でも、わかってしまった。
きっとあの二人が、手引きした犯人だったのだと。
だから、ジルは犯人が捕まったとしか言わなかった。
言えなかったんだよね。




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