完璧執事の甘い罠

｢俺たちは、そんな中でお前を護らないといけないんだ。わかってんのか｣

｢・・・ごめん｣



わかっているようでわかっていなかったのかな。
自分の立場とか、目まぐるしく変わっていく中で。


自分が結局は選んだ道なのに。




｢で、なにをフラフラしてたんだ｣



呆れたように一つ息を吐いて、さっきまでとは打って変わり穏やかなトーンでノエルがそう言った。




｢・・・ジルのね、好きな人って誰か知ってる？｣

｢は？ジルの？｣



怪訝そうな顔で見返された。
そうだよね・・・。
なに変な事聞いてんだって思うよね。



｢さあな・・・。でも、ずいぶん前から誰か想ってるやつがいるんじゃねぇかと思うことはあるな｣

｢え？どういうこと？｣

｢時々、物思いにふけってるっつぅか。仕事中はそんなこと見せねぇけど。時々、何か大事そうに見てる時があるな｣




ジルが・・・。
私は一度も見たことがない姿。
それは、ジルは私の前にいる時はいつだって仕事姿、だからだろうか。