完璧執事の甘い罠
「なんでそんなこと気になんの?」
「・・・別に。私、ジルの事、なにも知らないなぁって思っただけ」
「ふぅん」
ジルにとって私は、やっぱり仕事の対象でしかなくて。
だからこそ、護ってくれて、優しくて、いつも側にいてくれて。
それを、勘違いしてるのは私だ。
特別に思ってくれてるって、そう思いたいのは私の勝手だ。
あのキスだって・・・。
私が、我儘を言ったから。
あのキスの後、ジルの態度に変化なんてなかった。
それが全てを表しているんだ。
そんな事、初めからわかってたことなのに。
ジルの好きな人・・・。
いったい誰なんだろう。
「ノエルは?結婚とかしてるの?」
「は?俺の事はどうでもいいだろ」
「ノエルのことだって、なにも知らないもの」
「知らなくていいよ」
げんなりした顔でそう答える。
それでも私は期待を込めた瞳でじっと見る。
「はぁ・・・。してねぇよ。してねぇし、するつもりもない」
諦めたように、ノエルはそう答えた。